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「馬鹿かお前ら、よってたかって一年をいじめやがって。お前らがやってることは犯罪だぞ、は・ん・ざ・い!」
 倉庫の扉に誰かが立っていた。逆光でも彼が怒っているのがわかった。
「鈴森かっ! ちっ、二年が口を出すな!」
 遙を襲った者の一人が叫ぶ。
「オレはそいつの同室者なんで、口出す権利はあるんですよ、先輩たち!」
 そう言い放って海都は遙を縛り上げている者めがけて蹴りを入れた。鮮やかな蹴りに吹っ飛ばされて床に落ちた。
「遙、大丈夫か?」
 猿轡をはずされて、彼は思いっきり息を吸い込んだ。
「はぁ、はぁ、・・・・・・んのやろ!」
 縄をはずされて暴れだそうとした遙を海都は押しとどめた。
「お前は手出しをしてはいけない。確かにあっちが悪いが、暴力はダメだ!」
「でも、海都先輩!」
 腕の中でもがく遙を抱えながら海都は首を振る。
 その隙に他の二人が扉から逃げようとして、突然立ち止まった。
 廊下に立っていたのは咲岡先輩だった。
「漣!」
「逃げられませんよ。恩田先輩、加藤先輩、川村先輩」
 腕を組みながら彼は驚愕する先輩どもを見下ろした。
「このことが公になれば、寮で騒ぎを起こしたとしてあなた方は謹慎か、悪くて停学か。少なくとも三年のあなた方の内申に響くことは間違いないでしょうね」
「ちっ、だが証拠がなければ誰も信じないぞ」
 たしかに遙はしばられただけで、怪我などはない。だが、咲岡はさっと右手に何かを取り出した。
「証拠ならありますよ、これさえあれば完璧でしょう?」
 そういって彼はカメラに収められた画像を再生した。そこにはつかまった遙と、それを縛り付ける三年生の姿が納められていた。
 それを見て氷つく三人。
 海都がいつのまに、とつぶやくのが聞こえた。
 つまり彼が遙を助けようとしたときも、助けもせずにその証拠写真をとっていたということだ。
 悪魔のような笑顔を浮かべて咲岡は目の前の先輩たちに宣告した。
「もちろんこれは私の一存で公にしないこともできます。どうしますか、先輩?」
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